昔、母のオリエント急行での取材に同行したことがあります。
大学の卒業祝いを兼ねての旅行でした。
ロンドンからベネチアまで一泊二日の列車での優雅な旅。
一生忘れない貴重な体験になりました。
そして、母との最後の二人だけの旅でもあったため、
大切な思い出の旅でもあります。
正直、今思うとあの旅は少なくても20年は早かったような気がします。
20代前半の大学で縦の世間知らずな私にはまだもったいないような。
母もきっと当時、今の私と同じように思っていたことでしょう。
「私の横にいるのは娘ではなく、素敵な男性だったらもっと良かったのに」と。
その「素敵な男性」とは父のことだと娘としては思いたいです。
確かに、大人になってから、もう一度体験してみたい旅です。
いつかまたやりたいことの一つです。
きっと昔とは全く違った体験になることに違いありません。
当時の母の年齢とは、今の私とほぼ一緒だと気付いて驚き。
写真は途中駅でちょっとだけ下車した私に、窓から手を振る母。
とてもいい笑顔で楽しそう。
列車内はまるでアガサ・クリスティーの小説の世界。
そして今まで経験したことのなかったようなサービス。
これだったら一生列車の中で暮らしてもいいと
母と二人で冗談を言ったりもしました。
そして美味しい食事。
その中で一生忘れないのがズッキーニの花を使った一品。
ズッキーニの花は初めて。
当時はズッキーニにお花があるとも知らないぐらいでした。
牛の骨髄をズッキーニの花に詰めたお料理の美味しさと
その時の感激は今でもはっきりと覚えています。
ズッキーニの花の料理はあの日以来食でした。
よく思い出し、食べたいと思っても、季節の問題などで
なかなかタイミングが合わなかったのかもしれません。
そして先日、いつも行く野菜市でついに発見。
迷わず手に取り、すぐレジへ。
さあ、何を作ろう。
オリエント急行のシェフを真似しようとは、とんでもない。
自分の出来る範囲のものを、と思って豚の挽肉とハーブとお米を
お花に詰めてオーブンで焼いてみました。
簡単に言えば、ピーマンの肉詰めのズッキーニのお花ヴァージョンでしょうか。
とても美味しかったです。
もちろんオリエント急行の料理とは比べられませんが、
「ズッキーニのお花」を目の前に、あの時を思い出し、
久しぶりに写真や記念品としてとってあったメニューや
車内の個室にあった案内やレターセットなどを手に取って
あの時を振り返る良いきっかけに。