2012年10月11日木曜日

「香水のつけられる空間」


最近、母が残した作品の整理で忙しい日々が続いています。
百を超える本、そして全部合わせたら数百、
もしかしたら千を超えるかもしれない雑誌や新聞などの記事やエッセイ。
















本は分かりやすく本棚に並べることができても、
大量にある雑誌や新聞の切り抜きをどのように整理するか、
片づけ&整理好きなこの私でも今回はちょっと頭が痛い状態です。

整理がなかなか進まないのは、
面白そうな記事やエッセイを見つけると
手が止まってしまい、それを読んでしまうから。

でも本当のことを言えば、
途中で読んでしまうから整理が進まないのではなく、
読まないと整理が進まないのも事実です。
あまりの多さに娘もまだ読んでいない物がたくさんあります。

今日も面白いエッセイを発見。
ちょっと面白かったのでシェアさせていただきます。

1988年に書いたのに、
今にぴったりだと思ってちょっと感動しました。
住宅関連の会社のPR誌のために書いた文章です。





















― 香りのつけられる空間 ―

「人が生活するだけの空間から、
人生を楽しむスペース創りの時代に入ったと思う。
しかしあくまでも主役は人である。
話は飛躍するが、日本の住空間の中で女たちは香水がつけられなかった。
ひとつにはスペースそのものがせまかったこと。
そしてあまりにも多くの種々雑多なものが、
その中につめこまれ過ぎていたために、
日本人は過剰な物たち ―インテリアとは程遠い時限の― の織りなす
不協和音の中で、物たちに支配されながら暮らして来た。
驚くほど無用なものが、日本の住空間の中にはある。
よく日本の家は兔小屋にたとえられるが外国を旅してみるとわかるが、
決して家そのものは小さくないのである。
物が多すぎて住スペースがせまいのだ。
今、私たちはインテリアに対する考え方の、
ターニングポイントにさしかかっていると思う。
快適なスペースを取り戻すこと。
女がその中で香水のつけられる空間。
贅沢であり充実したインテリア。
もちろん住む側の感性のレベルアップも必用である」

                                                森瑤子 1988年夏 Better Living Core より

今、物を減らすこと、すっきりした住まい、
美しいインテリアなどに関して
様々な考え方やアプローチがありますが
香水のつけられる空間といった考え方は個人的に好きかもしれません。

ただお部屋をきれいにするだけで終わらなく、
その先の夢があることも大切です。